先生のたまごたちへ

勤務校にはいま6人の教育実習生が来ている。

パリッとした白いシャツに、真っ黒のスーツ。少し緊張した面持ちの大学生たち。

実習生が居ると、生徒も教員も心が少しだけ浮き立つような気がする。

 

私は彼らと深く関われる立場には居ないのだけど、

廊下ですれ違ったり、職員室で指導教員と話している彼らを見つけたりすると

心の中で「がんばれー!」とエールを送っている。

 

先日、指導教員の先生が出張だった時にてん補としてHRに入った時に、

実習生が堂々と帰りの会をまわしていて、びっくり。

指導教員の先生が「後ろで見守っていてください」と言付けを残して出かけていったけれど、

本当に後ろで見ているだけだった。

 

彼女の凄いところは、どんどん生徒の中に入っていくこと。

最初から「うまく収めよう」と思ってないところ。

生徒に語りかけて、でも、その後同じくらいの時間をかけて生徒の反応をきちんと待つところ。

最後は自分のメッセージを届けよう!という強い意志が感じられるところ。

 

私だったら、怯んで最後まで突き通せなかったり、

まだ伝わらないかな、と諦めてしまってないだろうか。

部活の時間も迫っているし、早くさよならした方が生徒も嬉しいよね、とか

いろんな言い訳を用意して自分をオープンにしてない気がする。

自分の保身のために。

 

帰りの挨拶をして、生徒たちが去った教室で、ふたりで少し話をした。

教育実習、どんな感じ?というざっくりとした話から、

授業の話まで。

しばらく話を聞いていると、だんだん表情が変わっていく…

最初は緊張していたのかな。

「実は不安なんです」とぽつりぽつりと話してくれた。

 

彼女の話を整理すると…

どうやら、自分が配属されたクラスはいわゆる「やんちゃな子」が多い。

いろんなクラスを見て回っても、自分のクラスは授業の様子が他と違うようだ。

授業中もよく脱線してしまうし、生徒同士の言葉の応酬がひどくなってしまう時がある。

そんなクラスで、自分は「良い授業」ができると思えない。

研究授業で失敗して、先生たちに怒られたらどうしよう…

 

ふんふん、そうなんだ、と聞く。

「それはね、こうなんだよ」とすぐ突っ込まないように意識しながら聞く。

(ファシリティターの勉強中です)

吐き出したかな、と感じた時に、こちらからは少しだけ。

 

そもそも「良い授業」ってなんだろうね?

生徒がのびのびそこに居ることができたら良いんじゃないかな?

あと、先生たちはそんなこと(教育実習生に良い授業をしてもらうこと)を望んでないと思うなあ。

ここからはあくまでも私の考えだけど、

学校の外から大学生が来て、生徒たちや私たちと一緒に学んでくれることが一番のギフトだから、

あなたがここに存在していることそのものに価値があると思うよ。

それ以上のことは、プラスアルファのこと。

 

うーん、振り返ると、話しすぎたかなあ。

基本的に聞くことに徹したいのに、まだまだ我が出てしまう。

 

日々授業がうまくいかなくて落ち込んでいる自分でも、

同じように落ち込む他者を見るといっぱしに励ますんだなあ。

もっと自分のことも上手に励ませたら心持ちが明るくなるのかもしれない。

 

自分は指導教官ではないけれど、心の中でエールを送るだけじゃなくて、

ささやかなコミュニケーションでも良いから、少しでも彼女たちの心が温まるようなことばをかけようと思ったのだった。

きっとそれは自分自身へのことばでもあるのだから。

 

BGM: "かなしいゆめをみたら - remastered" By 青葉市子